「Let us as human beings determine our own journey in life 」 ジョン・ライドンがそう言ったとき、同じ目をして彼を睨んでいた女性がいた。 英国版「朝まで生テレビ」みたいな(朝までやっているわけではないが)、政治家や著名人が時事問題を討論する生番組「Question Time」に出演したジョン・ライドンは、 例によって随所で笑いを取りながら場をエンジョイしていたのだが、ドラッグの合法化に関する討論で、真顔になって言った。 「ドラッグを法で規制する必要はない。俺たちの人生の旅程は、ヒューマン・ビーイングである俺たち自身に決めさせろ」 「That's wrong!」と、聴衆のなかからその女性は叫んだ。 「私はドラッグの問題を抱えた子供たちを相手に仕事をして来ました。ドラッグの長期的影響や、それが彼らの人生をどう変えたか、この目で見て来ました。 ここに座っている誰も、ドラッグを合法すべきなどと私に言える人はいません」 ロンドン東部あたりのユースワーカーのような風体をした黒人女性は言った。 「俺はミドルクラスのアホとして言ってるんじゃない。俺はフィンズベリー・パーク出身だ。ソリッドなワーキングクラス・ボーイなんだ......」 「俺たちの時代はな、みんなで助け合ったんだよ......」 ライドンは急に脱線をはじめ、「そういう問題じゃないだろう」という冷ややかな目つきで周囲に睨まれながらしゅるしゅると縮んでいった。