昨春、初めて選挙に挑んだ鹿児島市議会議員の向江香穂理さん(33)は、有権者からのセクハラの多さにがく然とした。
つじ立ち中、見知らぬ高齢男性に体を触られた。後ずさると「少し触らせてくれたら票なんか入るよ」と返された。
「1位で当選させてあげる」。こう言い寄ってきた70代男性からは毎夕のように電話がかかってきた。
距離を置くと「俺をなめてるだろう」「家の場所は分かっている」と脅迫まがいのことを言われるように。子どもに危害が及ばないか不安を覚えた。
当選後も無言電話や面識がない人からの食事の誘いなどに悩んだ。「公人だから対応して当たり前という感覚だろうが、人としての尊厳は大切にしてほしい」。
女性の貧困など課題解決へ県内の女性議員が増えてほしいと思う。一方で「友人や知人に容易に勧められない。かなりの覚悟が必要」と言い切る。
■「悪気はない」「減るもんじゃない」
南日本新聞は2〜3月、当時の県内の全女性議員74人(県議会と30市町議会)にセクハラに関するアンケートを実施。3月9日付で被害実態を報じた。今回、4月以降に議員となった2町の3人にも同じ内容を尋ねた。
計77人のうち4割が「選挙期間中に被害を受けた経験がある」と答えた。しつこい握手や抱擁、下品な言葉−。有権者に強くあらがえない立場につけ込まれる様子が浮かぶ。
「議員活動中の被害経験がある」と回答したのも4割だった。有権者だけでなく、同僚議員による身体的接触も。「悪気はない」「減るもんじゃない」。心ない言葉まで投げ掛けられ、深く傷ついたとの告白もあった。
■尻や足…何度も触るベテラン議員
県内の60代女性議員はベテラン議員から幾度となく尻や足を触られた。庁舎内の移動中や議員研修の合間など白昼に堂々とだ。「何をするの」と大声を出して手を払っても、聞き入れられなかった。
同僚議員も見て見ぬふり。「注意してくれる人がいなくて孤独や失望を感じた。誰かに止めてほしかった」と振り返る。
70代女性議員にもいまいましい記憶がある。数年前、議員研修で重い荷物を持ってくれた同僚議員と“男女の仲”になったとのデマが地元で広まった。
議会事務局が手配したホテルでたまたま隣の部屋だっただけ。全員協議会で「女性だからってばかにするな」と思わず声を張り上げた。
この議会で初の女性議員として介護や福祉問題を中心に住民の声を行政に反映させてきた自負がある。女性も男性も同等と思い頑張ってきたが、圧倒的に女性の方が努力が必要と痛感する。
「何かあれば『女だからだめ』となる。品位に欠け、低レベルの言動に振り回され悲しい」。本業以外の心痛が絶えない現実にため息は深い。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5a4a74fb85910040fb927e37746e98657c725054