猛威を振るう、新型コロナウイルス。1日の全国における新規感染者数は、19日時点で2万5,000人を超えた。
特に、ワクチンが行き届いていない20〜50代の感染は、全体の8割を占めるなど深刻だ。
「じつは、こうした働き盛りの世代を中心に、コロナから回復したあとも“コロナ後遺症”と呼ばれるつらい症状を訴える方が増えているんです。
最近は相談が急増していて、毎日午前3時ごろまでオンラインで診療をしています」
そう語るのは、これまで2,200人以上のコロナ後遺症患者を診察しているヒラハタクリニック(東京都渋谷区)の院長・平畑光一さん。その深刻な症状を、こう説明する。
「日常生活に支障をきたすほどの倦怠感や、気分の落ち込み、頭痛、息苦しさや動悸、不眠、体の痛みなど、症状は多岐におよびます。
最近、特に問題となっているのは“ブレインフォグ(脳の霧)”と呼ばれる認知能力の低下です」
“ブレインフォグ”とは、文字どおり、頭の中に霧がかかったようにボーッとして、物忘れが多くなったり、
集中力や思考力が低下する症状のこと。その結果、これまでできていた仕事や生活ができなくなるという。
「クリニックを受診する患者さんの中には、コロナ後遺症によるブレインフォグで失職した方が何人もいらっしゃいます。
たとえば、企画立案、人材の育成や管理、編集、経理など、頭脳労働を要する職種の方は、アウトプットができなくなると仕事になりません。
辞めざるをえない状況に追い込まれるんです」
多くの患者を治療するなかで、ブレインフォグには“上咽頭”の炎症が関与していることがわかってきた、と平畑先生は指摘する。
「ブレインフォグを訴える患者さんの多くが、脳の近くに位置する、鼻の奥の上咽頭という部分に炎症を起こしています。
この部分の炎症が脳の血流やリンパの流れを阻害して、ブレインフォグを引き起こしている可能性があるのです」
そこで、平畑先生が臨床現場で模索した結果わかってきた、効果的なセルフケアを押さえておこう。
「当院では、重い後遺症を抱えていた患者さんの7割が、適切なケアをすることで、当初の半分ほどに症状が和らいでいます。
特に、上咽頭の炎症がある方には、耳鼻咽喉科で炎症を治療するのがよいでしょう。
上咽頭の治療を行う耳鼻科が近くにない場合は、“鼻うがい”を実践してみてください。ぬるま湯に1〜2%の食塩を入れて生理食塩水を作り、
それを片方の鼻から吸って、もう片方の鼻から出します。苦手な方は、市販の鼻うがいのキットを利用するといいでしょう」
食生活の見直しも必要だ。
「胃酸が上がってくると、鼻咽頭が刺激されて荒れてしまいます。それを避けるため、就寝前1時間以内の水分摂取や甘いもの、
油もの、炭酸飲料などは控えましょう」
また、思うように体が動かないからといって、焦るのは禁物だ。
「鍛えれば治る、と思って無理に体を動かす方がいますが、悪化の原因になるので、絶対にやめてください。
また、スマホやテレビなどの画面を長時間見るのも、脳の負担になります」
とはいえ、いちばんの対策は、「コロナに罹らないこと」だろう。
「“鼻うがい”は、感染予防にも効果的です。一日6回の鼻うがいをすることで、家庭内感染を防げたという事例もあるんです」
少しずつ解明されつつあるブレインフォグだが、まずは感染しないように努めよう。
https://jisin.jp/life/health/2012449/